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困った病気になっちゃったひとりぼっちな人のために


by ombres
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告知に至る道(4)

朝から小雪がちらついていた。

11時にフェイシャルの予約を入れていたのだが、起きるのが面倒くさく、サボってしまおうかとも思った。しかし、「ああ、私はガンですから、もしかしたら、これでフェイシャルも人生最後なのかも?」と自己陶酔&悲劇のヒロイン的なネガティブ妄想し、「じゃあ行かないとねえ」と自分を奮い立たせた。



 
自分は、本来グータラで引きこもりオッケー人間なので、どんどん何もしなくなってしまう。そんな人間にとって、この「ネガティブ奮い立たせ方法」は結構効果的だ。

例えば、「ああ、Aと食事行くの面倒くさい…」と思っても、「ああ、Aと会えるのも、一生でもう最後かもしれないなあ、ガンだから」と思えば、これはもう少々無理をしてでも絶対行かねばならない気分になってくる。今後、この方法を活用してアクティブになろうと思った。

エステでは店長さん相手に、ガン保険と検査の大切さを伝道。もう私はガン保険使徒として伝道に生きる決意を新たにした。ガン保険に入ってないのにガンになっちゃった愚かな生き証人として、人生を真っ当しようと…。ガン患者の伝道以上に説得力のあるガン保険勧誘があろうか?いや、ない。たくさん勧誘するから、アリコでもアフラックでも、今から私をこっそりガン保険に入れてくれまいか?  

その後、銀行でお金を下ろし、病院でもらった入院指示書の用品を揃える買い物。入院は初めてなので、ちょっとウキウキする。「持ち物:石鹸、タオル...等々」、ここに「おやつは300円まで」とかあったら、久々に、遠足みたいな気分だ。その後、手術の後に着用する前開きのネグリジェ、前開きのパジャマを3着買う。自分が今持っているのは頭からかぶるタイプしかないので、胸切られて痛かったり動かなかったりしたら、脱ぎ着が辛くなる、きっと。

…しかし、ムダな出費だ。本来、全く必要なく無縁なものをこんなに。もう二度と着ないイケてないネグリジェとか。もう、もったいない…と考えたら怒りが湧きそうだったので、そこで考えをストップした。これから、パジャマ代どころか、入院費や手術代、検査費などが延々とかかる。ああ、些細な検査代や時間をケチったからこの有り様だ。トホホ。

その日も遅くまでネットをさ迷い、やはり自分は今の段階で、所謂「進行ガン」「3a」か「3b」で、切れば治るのではなく、かなりダメっぽいという情報を収集する。ああ、自分は手術で胸を取られて、その後、抗がん剤でヘトヘトになって、社会復帰もできず、結局どこかに転移して、あちこち痛くてすぐ死ぬに違いない…。

…待てよ。じゃあ、働けなくなるので、生活保護を受けられるのだろうか?と、考えてみる。あと、年金払うのは、もう止めようと思う。国民年金やら厚生年金やら、もう20年近くも真面目にコツコツ納めてきたのに、全く回収できずに終わるのだ。何たる勿体無さ。馬鹿馬鹿しい。逆に健康保険は、今後とってもお世話になるだろうから、払っておいてよかった。

ニッセンで安いカツラがセールになっていたのを思い出し、ためしにオーダーしてみた。カツラも初経験だ。初めての事は、何でもちょっとウキウキする。

その夜、お風呂に入って、自分の胸をしみじみ眺めてみる。
「ああ、もうすぐこの胸ともお別れ…。ごめんね、長い間ずっと一緒だったのに、大事にしてあげなくて…」
と、このモードでは、さすがにちょっと泣けそうになった。しかし、速攻で「ムダ。泣くのは、ムダ。事態を全く好転しない」とのムダムダ大王の囁きが聞こえ、涙が引っ込んでしまった。否定とか、怒りとか、悲しみとか、受容に至る一般的プロセスを、自分も通るのだろうか?
by ombres | 2004-01-17 00:00 | 告知に至る道