困った病気になっちゃったひとりぼっちな人のために


by ombres
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カテゴリ:仕事のこと( 11 )

獅子の谷

掃除対象となっている寝室のカーテンを洗濯して、今日のお掃除は「洗面所」と決めて、心穏やかに過ごしていたら、部下T君より携帯に、

「いつ頃戻れそうですか?(;_;)」

と泣き事メールが。
会社行こうとするとお腹痛くなったり、口内炎ができちゃったり、近頃、疲れてるんじゃないか?って他人に言われる人々発生らしい。学校行くのイヤな小学生か?

「Sさんも、早く戻ってきてくれないかなあって仰ってます」

…いつ頃戻るも早く戻るも何もさ、まだ休み始めてたった2週間で、しかも、これって溜め込んだ有休消化で、それは労働者としての当然の権利で、それなのに検査や通院でバタバタしていて、私はまだ全然休暇を楽しんでないの。これから、なの。家だってまだきちんと掃除できてなくて、DVDも全然見てないし、テラスの草むしりだって暑いから中途半端だし、積んだゲームもしてないし、保険の整理もしてないし、弁護士さんに遺言も作ってもらってないのに、もー何なのよ、一体?!ゆったり休養しようとしている病人を、「良かったですねえ」とか暖かい気持ちで見守れないワケ?それって、社会人として、どーなのよ?

…と、いつものように怒鳴りつけてやりたい所を、菩薩のような気持ちで堪える。

ガンパワーすごい。発狂ババアをも菩薩に…。


そう。獅子はわが子を千尋の谷に突き落とすと言うよ…。

獅子でもないし、わが子でもないけどさ。

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でも、ちょっと不憫になったので、ハワイで買ったお土産を箱詰めして、宅急便で会社に送ってあげることにした。

ハワイ、楽しかったよ。面倒くさい病気や日本の事は完全に忘れてました。でもちゃんと、一瞬だけ思い出して、皆にそれぞれ合ったお土産買ってきたんですよ。T君の彼女の分とかまで。


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by ombres | 2010-09-11 12:29 | 仕事のこと

ロング・バケーション

今日でしばらくお仕事最終。結局、帰宅は23時過ぎた。やっぱ、忙しい会社だ。とりあえず。一ヶ月お休み。本当のお休み。まとめて有休。

基本的に、うちの会社は休みでもメールチェック必須。メールが多すぎて、ボックスがすぐ一杯になっちゃって肝心のメールが受け取れなくなってしまうから。前の会社でも、前の前の会社でも、「メール多くて異常」と思っていたが、たぶんここが一番多い。油断するとすぐ未読1000通。しかも、入社以来、いつでも会社携帯持ち歩いていた。お休みでも、親戚のお葬式でも、海外でも。施設は24時間稼動していて、何かあったらすぐに対応しなければならないから。

しかし、今回は、会社の携帯を持ち歩かなくても、PCを持ち歩かなくてもいい、本当の意味のバケーション!一ヶ月のロング・バケーション。

そりゃ、そうだよ。ガン患者が休んでいるのに、誰も仕事のことで電話しようとまでは思わない、人として。こうなったら、全国支社とは言わず、全世界社員に「ガン宣言」したい気分。そしたら、海外からの変な仕事押し付けとか夜中のどーでもいい電話とか、ストレス原因第一位だった素っ頓狂なコンタクトが皆無になるだろう。イヒヒヒ…。

思わずニヤける顔。ガン患者としての無敵アドバンテージに幸せな気分で満ち溢れながら廊下を歩いていると、同じくらいの歳のT子さんが来て、「入院したらお見舞いにいってもいい?」、とか泣き出しちゃったので、仕方なく、障害者トイレに連れ込む。

「いや、入院もしないし、在宅なんだよね」
「え、そうなの?」
「それに明日から、一週間ハワイなの。会社の提携コンド、知ってる?」
「え、知らない、何それ?」
「安いのよ、結構いい場所にあってさ。ヒルトンの隣?」
「えー、まじで。どうしてそんな情報ゲットしたの?」

と、すっかりオバサンの井戸端会議化してT子さんも泣き止む。
その後、ミーティングに入っている間に、皆さんが挨拶に来たらしい。遅くなって戻ると、デスクの上には、色々なプレゼントやカード。外人スタッフの1人が、ひらがなで、「みんなでかえりをまっています。はやくよくなりますように!」ってカードくれたり。心優しい皆さん。

仲良しGMに「じゃ、また。パワーアップして帰ってくるから」と言ったら、「パワーアップは、それ以上いらないから」とか返されて、回りの皆さん大笑いで、明るく終了。

さて、本当に帰って来れるのだろうか?
案外ケロリとして戻れるのかもしれないし、そうでないかもしれない。

精神力や気力は大事だけど、私よりもっとパワフルな患者さんが亡くなっていったのも見ているし、悪い人がのうのうと長生きするし、良い人が悲劇的な死を迎えねばならなかったりする。生死の運命には、大きなサダメのような物を感じる。津波で元の会社の同僚一家が亡くなった時も、彼らを探しに行ってたくさんの犠牲者を見た時も、そう思った。大昔、法医学の先生もそんな事を言ってた。

ジタバタしないで、好き勝手やって行こうと思った。今までもそうだったし。


帰りのドライブは、久しぶりに湾岸をぐるっと回ってみた。

鶴見のつばさ橋のトップから見える横浜の夜景が、個人的には一番綺麗だと思う。アメリカライクで真っ直ぐな美しい橋の絶妙な傾斜。正面右にみなとみらい、左にはベイブリッジ。

イマイチ垢抜けない、愛すべき田舎町、横浜。森鴎外作詞の「横浜市歌」が暗唱できることが、ハマっ子の証です。



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by ombres | 2010-08-26 23:59 | 仕事のこと

決戦は水曜日

朝から首都高は事故渋滞。イライラするが、「ああ、もうこの通勤ともしばらくお別れだわねえ」と思うと、渋滞すらも愛しく思えて…きません。

全支社テレビ電話でつないで、全マネージャーの臨時ミーティング。
一体何だろう?と集まったみなさんに、

「私はガンでして、しばらく治療に専念するためお休みします。調子見ながら在宅でできる事やります。色々サポートお願いする事もあるかと思いますが、よろしくお願いします」

…シーン。
そりゃ、そうだよ。私だってシーンとしちゃうよ。どーリアクションすればいいのさ?って感じ。

しかも追い討ちをかけるように、

「『5S活動』は皆さんもよくご存知かと思いますが、健康管理のためには『3S』という言葉があります。3Sとは、『食事』『睡眠』『ストレスコントロール』これら3つのSで、しっかり自分の健康管理をしなければなりません。健康管理は社会人としての勤めです。あと、自分の保険を見直して、とりあえずガン治療はお金かかるので、ガン保険は入っておいたほうがいいです」

と、さっき思いついたでまかせ説教から保険のおばちゃん化。

「ああ、このままでは、もし復職できなかったら、皆の記憶の中で私は最後まで『説教ババア』か『保険のおばちゃん』…」とか思いつつも、一度走り出したら止まらない。笑っていいんだか真面目な顔していんだか困り果てる皆さん。明るい雰囲気で終了。メールが来たり、個別に励まされたり。優しい人達。でも、皆、ショックだった様子。そりゃそうだよ。だからイヤだったのに。

でも、若い人にとって、人生には色々あるって、良い経験になればいい。これからも、家族や知り合いの死、病気など、どうしようもない事に直面していかなければならなくなる。その回数が多いほど、悲しいけど、人は慣れる生き物。そして、乗り越え方や自分の中での折り合いの付け方を知る。ついでに、ガンに対する偏見もなくなればいいし。

そんな何もかも許せるような穏やかな気分で仕事していたら、また別の部のすっとぼけた人が、「10月オープンの臨時施設の現地見学、急な話なんですけど、今日の17:00からいかがですか?」って、もーさ、この人はいつも、そう。そもそも、臨時施設オープンの話も全く聞いていませんし、17:00から見学って、この暑いのにどうせ冷房も入っていない施設を、初見だからぐるぐるぐるぐる最低2時間はチェックしないといけないじゃないの?!と、眉間につい深い皺が。

…いけない。怒りがストレスになって、免疫力が落ちる。しかも、ここで「また、ふざけてんですか?」とか叱り飛ばすと、彼にとって私の最後の思い出が、「すごい怖い顔で怒られた事」になってしまうかもしれない。と、自分を戒めてニコニコ参加。

ガンパワーすごい。
発狂オバサンをも宥める。


…やはり暑苦しい施設の4階。
ヨロヨロとレ・ミゼラブル気分で歩いていると、開けた窓から夕日に反射した雲が、神々しく後光が差したように輝いているのが見えた。印象派絵画風味。

「ああ、奇跡…これが奇跡なのね。こんな所まで真面目にチェックしている私へのご褒美。私のガンは消える…」

とか、せっかく神々しい気分でイメージトレーニングしようとしたのに、T君が「ここって、消防突入口ですよねえ」とか話しかけてきてジャマされる。奇跡は難しい。



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by ombres | 2010-08-25 22:11 | 仕事のこと

秋刀魚の季節

午前中はお世話になっている業者さん巡り。担当者ではなく、何でも私に連絡してくる業者さんが多いので、「ちょっと担当を外れるんですよ」と説明し、普通にそれぞれの担当者を窓口としてくれるようお願い。暑い。駐車場の推定気温は43度。

部下の里子先が決定したので、それぞれの上司に個別に事情説明。皆、驚くが、「変な噂になるとかえって面倒だから、ちゃんと説明した方がいいと思います」と、ボスの判断を支持。「とりあえず、治療に専念してください。出来る事は何でもしますから」と励まされる。

私のチームのスタッフを、それぞれ今までどういう育て方をしてきたか、どういうキャリアを伸ばして欲しかったのか、本人の希望はどうなのか、スキルは付いてきているのか、簡単に説明。それぞれ、来週、個別ミーティングしてもらう事に。

ところで、いつもオヤジギャグ飛ばすWさんがいる。大らかで、でも厳しい所は厳しくて、頼りがいのあるオジサマだ。そのWさんってば、人がせっかく真面目に話しているのに、

「いや、ガンなんて、どこにでもいるからね、今では。ほら、中国のKさんって知ってるでしょ?」

と、突然。
Kさんは中国のスタッフ。日本に研修に来てたり、私が中国に行くと会ったり。Wさんは中国も見ているので、Kさんの上司だ。

「Kさんの奥さんもね、去年かな、ガンで大変だったんだよね。学校の先生だったんだけどね。相当酷い状態でね、だからKさんも大変だったんだよ。でもね、奥さん、もうすっかり元気になってるんだよね」

そうか…。Kさん、大変だったんだなあ。と、しんみり。
でも、奥さん、元気になって良かったですよね。

「ほら、中国の医療ですら、ガンでも元気になるんだからね~。中国だよ、中国。日本の医療なんて、それに比べたら、ねえ?だから、全然心配ないよ!」

…。
ちょっと、Wさん…。

笑わせようとしてくれていたのか、真面目なのか不明。でも、思わず、笑っちゃった。まあ、確かに、中国のセンターで私達は目を疑うような驚愕な事象をいくつも見たし、ほとほと困った事もあったし、あり得ない事も多かったけどさ。北京から、車でほんの30分なのに、地面に穴だけが空いてるトイレで、お尻だして用を足しながら、世間話している人達とかさ。でも、中国には中国で、4000年の歴史の漢方とか、よく判らない謎医学があるような気もするんだけど。


夜になってから、部下に説明。
1人1人、呼んで。事情と今後。
男女漏れなく泣かれる。だから、イヤだったんですが、もう走り出したものは仕方ない。

若い人には、「ガン」と言うと、「爺ちゃんがガンで死んじゃいました」くらいの知識しかないから、やはりイコール「死」で、悲しい気持ちになるのだろう。

「あのね、ガンって言っても、大した物じゃないの。全然死なないから。泣いてるヒマがあったら、仕事に励んで、私が戻ってくる時には、『使え過ぎて、もう返したくない』って言われるようになっといてくださいよ。まかり間違っても、『ほんと、使えない。XXさん(私)って、一体今まで何やってたんだ?』何て言われるのは、ごめんですからね」

と、叱咤激励。
部の業務を専門にしている人って、日本には殆どいない。さらにその中で英語できる人は皆無に等しい。うちの業務は本国に直結している事が多いので、英語できないと、結構辛い。仕方なく、英語は得意だけど何の背景もない新人をもらって、私の好きなように育てた。だから、この会社で、彼らは私しか上司を知らない。彼らは別の企業での社会人経験はあったけれども、氷河期の派遣社員だったりで、まともに社会人としての教育を受けていなかった。もう会社が若い人に先行投資しなくなってからの社会人だ。不景気の犠牲者。メールの出し方、失礼でない断りの文面、相手の気分を害さない強気な交渉の仕方、タイムマネージメントなど、普通の社会人なら当然習得しているだろうと思われることがスパーンと抜けていたりして、苦労したこともあった。でも、素直で知識をよく吸収して、立派な社会人になってきていた。(人は植物のように、適度に肥料や水や日光を与えれば、すくすくと育つのに、社会がケチになってその機会を与えないのは悲劇だ。)

他人の下で働くということは、まずその人を理解する必要がある。そして、その人に対して一番最適なコミュニケーションの仕方を模索する必要がある。そして、実際に自分の伝えたい事がきちんと伝わっているか?相手の言いたい事を自分はきちんと理解しているか?効果測定しつつ、コミュニケーションをきちんと取っていく必要がある。等、社会人として、とても勉強になるんだよ。と説明。そして、それは経験でしか身に付かないから、良い経験と思って、よその家の子ライフをエンジョイしなさい。と話す。

かなり偉そう。
自分がそれをちゃんとできているかどうかは、かなり微妙。


傷ついた皆さんの心のケアのため、皆のお気に入りに和食定食屋でディナーをご馳走する。

秋刀魚焼き定食、串カツ、エビフライ、枝豆、サラダ等。ここでも、「肉やアブラ物を控えて健全な食生活うんぬん」と偉そうに宣言していたことを遠く思い出す。でも、秋刀魚、美味しい~。今年は不漁って聞いたけど、油乗ってて、美味しい。&大根おろし、最高。日本人でよかった。

食欲の秋ですねー。(もうすぐ)


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by ombres | 2010-08-20 00:00 | 仕事のこと

人に話す勇気

関西に出張中のボスと今後の事について、再度、話。人事担当者も関西に来てくれる。部下たちを誰に里子に出すか決定。今後のプランについて。いつ、どのような形で私の長期休暇&その後の在宅勤務を説明するか。

私は、「家庭の都合で」で休みたい。人事もそれに賛成。
でも、ボスには別の考えがあった。その日は、ボスはいきなり全部英語だった。

「それって、臭いものにフタだろ?日本的な。それで平気なの?」

え、日本的じゃダメですかね?
ローマではローマ人のようにしろとも言うし、私、日本人ですし。

ボス曰く、実は、ボスのお父さんはガンで亡くなった。姉妹も乳がんだけど、手術したくないので抗がん剤や色々な治療を何年もやっている。典型的なガン家系。だから、ガンのことはよく判る。すぐ死ぬようなガンじゃない。治療に2年、3年かかってもいいし、逆に気長にやらなきゃダメだ。体調悪かったら在宅したり、休んだり、体調良かったら、会社に来て様子見たり、皆と話して気晴らししたり。そのためには、病状はこうで、今後はこうだとマネージメントミーティングで皆にちゃんと説明しろ。サポートが必要な時に助け合うのがチームだ。お前には、「私はガンよ。だから何?」と毅然として、チームの一員として続け、皆にその背中を見せてやって欲しい。

…ちょっと、ナニ、マネージメントミーティングで説明って?

人事担当者「日本人はそこまでガンに対して成熟していないので、まだガン=死ぬ。だから、病人に腫れ物扱いしたり、何もやらせなくなったりしてしまう。発表したら、居づらくなってしまうのではないか?」

ボス「成熟さがないなら、成熟しなければならない。ここはアメリカの会社で、アメリカでは病気になると、皆、そうしている。本人が説明義務も果たすし、必要なサポートはこうだとはっきり言う。皆がそれに応じてサポートする。皆、誰だって病気になる可能性があるのに、それすらサポートし合えない組織は、『チーム』ではない。俺は、自分のチームにそれを学んで欲しいし、ここはそういう会社なんだって判らせたい」

…まあ、仰る事は確かに正論で理解できるんですけどもー…。

ボス「家庭の事情だなんて言って、しばらく休んでも、そのうちきっと変な噂になる。そしたら、逆に説明も面倒になるし、ストレスになるし、仕事もし難くなってしまう。だから、自分の口できちんと説明しておいた方がいい。お前が治療したい&仕事したいというなら、いつまでもサポートするし、お前が『治療イヤになったから、もう樹海行きたい』って言っても、冷たいようだけどそれはお前の人生だから、俺はそれでもいいと思ってるんだよ。だけど、お前もリーダーなんだから、ちゃんと皆に説明して、やって行くという勇気を見せてやってくれ」

…勇気。
私とは無縁のもの。

「誰にもガンだって言わないで、仕事を続けて、強いね」

亡くなったガン友Aさんが、メールでそう言った。彼女は肺がんだった。

Aさん、違うんだよね。私は弱いの。だから誰にも言いたくないの。誰にも心配されたくない。自分の事でその人が心を痛めるだろうとか、悲しむだろうとか思ったら、実際に悲しまれたら、泣かれたら、もうとっても辛い。

だから、言わない。知らせない。甘えない。その方が楽なの。強くないの。弱いの。すごくズルいの。向き合わないの。

ずっとそう思ってきたんだけど、Aさんには、「そうだよ。強いんだよ。Aさんも大丈夫、人間って、案外強いものなんだよ」と、Aさんが亡くなるまで、また意味不明な励ましを続けていた。…と、遠い記憶が蘇ってくる。


ボス「あとさ、どういう言い方がいいのか判らないけど、回りの人間に後悔させるような選択はするなよ」

ボスが何を言ってるのか、何となく判った。スタッフのLさんを思い出した。

ある日突然休み始めた。公式なコメントはなかった。どうしたんだろうね?と言っている間に、別人のように痩せた姿で現れて、それでも事情説明がなくて、「ガン?」「足が痛いって言ってた」「足が痛くて膨れたけど、筋肉痛かと思ってマッサージしてたって」と噂が広がった。彼は、x-boxで会社の皆と良く遊んでいた。オンラインになってないかな?気晴らしで遊んでないかな?とチェックしても、全くその形跡はなかった。

しばらくして、最初の公式コメントが、「残念なお知らせです」だった。それでも、病名の告知はなかった。

ガンじゃないか?って判った時、コンタクトしたかった。励ましたかった。私もガンだけど、大丈夫だよって言ってあげたかった。

大丈夫だよ。治るよ。元気になって、仕事に戻れる。皆、待ってる。抗がん剤、キツいよね。焦らなくていいからね。

…役には立たなくても、言ってあげたい事、やってあげたい事はたくさんあった。もし入院していたなら、気分が晴れるような差し入れをしてあげたかった。

でも、彼は理由を明らかにしないで休み、一人で亡くなって行った。人事と彼の上司しか本当のことを知らなかった。それが、本人とご家族のご希望だったのかもしれないけど。


私もいつか、死ぬ。
どうせ死ぬなら、回りの人に、「色々やってあげたよね」「やるべき事はやってあげたね」と、満足させて死ぬというのも、死ぬ人の責任の一部なんだろうか?残された者は、それでカタルシスを得られるんだろうか?


…あーあ。
仕方ないな。
そういえば、確かに、本社の誰かも白血病だって発表あって、皆でお見舞いの寄せ書きとかしたっけな。すっかり元気になって戻ってきて、また活躍しているから、すっかり忘れていたけど。

あーあ。
最初にガンになった時の会社もアメリカの会社だった。
でも、ちゃんと説明して、社会人的に良いことは一つもなかった。
…と、思って、逃げ出して転職しちゃったんだった。

あーあ。
こうなったら、また言うよ。ちゃんと皆の前で。「ガンですよ。でも、大した事ないから心配要らない。しばらくサポートお願いね。皆も、健康には気をつけてちゃんと検査してね」って。

で、見せるよ。ガン女としてのイキザマを。ヅラでも会社行くよ。あちこち痛くなっちゃって、杖ついても行くよ。やせ衰えちゃっても行くよ。自分から逃げないで、「もう、来るな」って言われるまで行くよ。そして、皆に見せるよ。ガンで仕事を続けるって、どういう事なのかを。


今までだって、やってきたんだし、これからだって、きっとできる。
やるよ。仕事ないと困るし。


しかし『樹海』ってナニ?
ボスにとっての自殺=樹海なのか?


あーあ。
仕方ないから、マシなカツラを買おう。
適当でいいやと思っていたけど、どうせなら、「全然、ガンには見えないね」って言わせたい。綺麗に痩せるよう筋トレもして、お洒落もせねば。「あの人、見るからにガンっぽいね」とか言われたら、ムカつく。


でも、ちょっと仕事はスピードダウンしたい。マジで。


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by ombres | 2010-08-19 00:00 | 仕事のこと
朝、7時から本社連中を交えて電話会議。パソで会社のファイルにアクセスして、調子よく説明していたのに、電話が途中で切れる。携帯の電池切れ。充電器を忘れて充電できず、間抜けな大ピンチ。

仕方ない。ホテルの固定電話使おう。
同じ会議に出席しているチームのT君に「テレカンのフリーダイアル教えて」とメール。T君、速攻で、有料の本社の電話会議回線番号送ってくる。いや、だから、「フリーダイアル教えろ」って書いたのにどーいうことなのかしら?

…ああ、T君はたぶん、いつもデスクからで、携帯からテレカンに入った事ないから、私の質問が意味不明なのだ。一刻を争うのにコミュニケーション不全でピンチ。

じゃあ、有料の本社の電話会議回線。そこに国際電話するしかない。しかし、最近、固定電話で国際電話かけたことがないので、かけ方が判らない無知によるピンチ。

あわわ。電話のディレクトリーに国際電話のかけ方載ってるんじゃないのか?と探すけど見つからない。フロントに聞いて、電話かけ成功。会議も無事終了。仕事と全然関係ないところで疲れた。

出社して、業者プリゼン3連発。プリゼンの聞き方というか、要点のチェックの仕方や特に注意すべき点などをチームの皆さんとおさらい。

まあ、何かいい感じ。
仕事終わって、食事。本日はチームのDさんを誘う。いつものイタリアンへ。夏休み。仕方ないので、いつものラーメン屋さんで、冷麺と餃子。

何か足りなくて、その後、ホテルの最上階のラウンジバーでちょこっと飲み。ナッツ、チーズ盛り合わせ、野菜スティックに、ギネスにバーボンにウォッカのカクテル。一応、気にして一杯だけ。でも、チーズ食べちゃった。食生活を改善してどーのこーのと宣言していたことが、遠く思い出された。

ここでも仕事の話。話題のない二人。もっと胸躍る話題はないのか?
職場でのちょっとしたイザコザや仲悪い事件を聞く。Dさんは元官僚。現場のたたき上げの組合が強くて、いい加減で、キャリア上司を苛めたりとかすごかったとのこと。公務員に組合なんてあったのかあ。

何で職場でいざこざやイジメとかまであるのか?上司ガン無視とかまであるという。大人げないにも程がある。いくらダメな上司だからって、ガン無視はないよ。相当ヒマなんだからと思う。名前の挙がった該当の部の仕事のバランスをこっそり見て、追加してしまう作戦はどうか?仕事に忙殺されていたら、ほかの事考えてる暇なんてないし。



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by ombres | 2010-08-18 00:00 | 仕事のこと

デスクが汚い女

駐車場(日陰)から、会社の正面(日向)に向かうまで、アスファルトの照り返しもあり、推定気温42度。暑いにもほどがある。

業者さんのプリゼン2連発にミーティング。その間にデスク回りの片付け。「きっといつか使うだろうなあ」と思っていたけど使わなかった資料とかシュレッダーの箱に。珍しく真剣に整理整頓する。なぜなら、万が一、このまま復職できなかったら、私は、「デスクにカップラーメンのストックが積み重ねてあった女」「菓子の袋が散らばっていた女」「修正液ペンを無意味に5本も溜め込んでいた女」と、非常にネガティブなイメージで人々の記憶に残る事になってしまう。それだけは避けたい。

「汚いデスクはダメな心の表れ」だと思うから、いつもきちんと整頓されたデスクを心がけていた…。けど、忙しさの余り、いつしかメチャクチャになってしまっていた。埃もすごい。

…さらに色々な物が出てくる。「きっといつか何かに使うだろうなあ」と思っていたけど全く使われなかった、空き箱、缶、リボン、ひも、ハギレ、包装紙、チラシ、古いカレンダー、意味不明のメモ等。お婆ちゃんの溜め込み風味? 全部捨てます。

明日は関西の病院。
外部クリニックでMRI撮ってデータもらって、病院行って骨シンチの結果も確認。

もうこうなったら何でも来いって感じ。何が出ても驚かない。どーんと行くしかない。ついでに転院のお願い。3ヶ月に一度だったら良かったけど、ケモであそこまで通うのはやっぱりムリだ。ちょっと寂しい。通院のついでに、年に4回、京都で遊んだ。友達と泊まりで出かけ、桜や紅葉を見たり、錦市場で買い物したり、美味しい物食べた。ずっとずっと、このままで、このペースで通っていたかった。けど、おしまい。先生、お世話になりました。データをCDでもらえるよう、親友Tが画策してくれた。

病院で、話が済んだらその後は、ちょこっと地元の業者さんと打ち合わせして、夜は偶然京都に遊びに行ってる乳がん友Jさんとご飯の予定。その後、大阪へ。水曜日は朝7時から本国チームと電話会議。日本の担当者が英語余り得意ではなく、捨て犬のように潤んだ目をしていたので、援護射撃のため入ることにした。朝早いのでホテルから。それから大阪のセンターに出社し、現地の業者さんプリゼン3連発。この日は、早めにあがって、いつも行くイタリアンでも行こう。木曜日は、業者決定して、承認とって、発注かけて、しばらく自分がいなくなっても関西のプロジェクトが回るよう調整して、夜、東京帰ってきて、転勤する元欧州企業の友人のお別れ会。

病気になってから、体力温存するようにしていて、普通、余り予定は詰めないし、出張の後に遊びは絶対に入れないんだけど、今回は特別。もういつ会えるか判らないんだし。(ここで、「私は死ぬかもだから、もう二度とないかも的アクティブ・モティベーション」を発動させる)

転勤しちゃう彼女は、私の抗がん剤&ヅラ時代、一番近くで働いていた。観察力も優れていたので、もしかしたらヅラだと気付いていたんじゃないかと思う。どう思っていたのか、一度も尋ねてないし、本人もそんな事は口にしないから判らない。でも、たぶんね。眉毛や睫毛もないんだし、ちょっと変だって思うよね。なんとなーく。

でも、まあ、身内や自分の「抜けザマ」を間近で見ていた人でないと、そこでいきなり「抗がん剤かも?!」なんて推理はしないか。…そう考えると、他人には案外バレないものなのかもな。

いや、そうではない。私の病人生活は、自分ひとりが頑張ってきたようなつもりになっていたけど、実は、良い人たちの善意でこっそりと支えられていたのかもしれない。きっとそうだ(良い人スイッチ)。プレゼントとカード用意する。あと、もう1人が、この間再就職したので、買っておいた再就職祝いの「スターウォーズてぬぐい」を忘れずに持っていく。

でも、場所が焼肉屋って、ちょっとー。確かに参加者は焼肉大好きな面子だとは知っているんですけど、私は肉食べないって決意したばっかりなんですけど。野菜とシーフードでも焼いておくか。


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by ombres | 2010-08-16 22:43 | 仕事のこと

男前なボス

ボスと人事担当に話す。
ボスは日系米国人。部分的に英語になってた。今までも感情的になったり、日本語で上手く説明できなくなったりすると英語になってた。

「休みたいなら、休め。治療しながら働きたいなら、働け。何でも好きにしていい。何でもフルでサポートする。ただ、ムリはして欲しくない。いつ戻れるとか、何ができるとか、何も会社に約束なんてしなくていい。最優先事項は、治療。これからの予定が何も立たなくても、お前は今までも、これからも、ずっとチームの一員であることに変わりはない。どんな状態でも、いつでも、この会社には、お前に仕事なんていくらでもある」

…泣けた。
でも、人前で泣くのは私のスタイルではないので、泣きませんです。

でもね、寝たきりみたいになっちゃって、そんな治療が何年も続いたら、いくらボスが庇ってくれてもさすがにダメと思うんだよね。社内規定もありますし。でも、漠然とした不安を払拭する強い言葉は素晴らしい。さすが私のボス。

その後、人事とお話し。とりあえず3ヶ月で診断書もらったし、休ませてくれるのかと思ったら、「100%休むとボケちゃうから、在宅でマニュアル作るとか、マイペースで負担にならない範囲でたくさんできる事があるはずです。まず一ヶ月は有休で消化して、その時の体調によってまた考えましょう」

…?
でも、まあ、一ヶ月はお休みね。となると、その間、部下が孤児になるので、それぞれ一時的に里子に出す相談。やはり後ろ盾がないと、プロジェクト回すのがきついだろうし。そして、とりあえず、「お家の事情でしばらくお休み」とアナウンス出してもらう事にした。皆にも部下たちにも心配かけたくないので、そう言う事にしておく。詳しく話したがらないけど、親の介護?とでも思ってくれればいい。

でも、ハワイ行くよ。27日から4日まで。前から決めてたし。治療始まっちゃうとしばらく行けなくなるし。骨転移してても行く。脳転移だとムリかな。
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by ombres | 2010-08-14 00:35 | 仕事のこと

仕事どうする?

仕事どうする?

乳がんは、体調にもよるが、通院治療ができる運の良いガンの一つだ。
だから、病気を理由に、何も諦める事はないと思う。

例えば、20代であったなら仕事を諦めて療養しても、まだそれほど社会に自分を投資していないから、新しくまた一からやり直せるかもしれない。50代、60代なら、職場でそれなりに足場を築き、もう自分の地位が安定しているだろうから、少しくらい休んでも致命的にはならないかもしれない。また、そこそこ蓄えもあるだろうから、早めの隠居生活で第二の人生を楽しんでもいいかもしれない。

しかし、これが30代、40代だと話は別だ。簡単に捨てるには惜しい程度、仕事に自分を注ぎ込んできた。かと言って、まだ「盤石なキャリア」を積み、「安泰した地位」を築いた、という程度にまでには至っていない。仕事を諦めるにも隠居するにも、どちらにも中途半端なのだ。

だから諦めてはいけない。
自分が今まで築いて来たものを捨ててはいけない。

確かに、体も大事だけれど、今までずっと仕事が好きで打ち込んできた人間がそれを手放したら、そこには何も残らない。特に独身者の場合、社会との繋がりの基盤すら無くしてしまうかもしれない。また、女性は、一度辞めたら再就職が難しい年齢になっている(最近は、男性もだけど)。仕事がなければ収入がない。治療費すら稼げなくなってしまう。「収入がなくなる」…大富豪な人以外は、そのストレスには耐えられない。「社会の誰からも必要とされていない」…大富豪でもそのストレスには耐えられない。ましてや、か弱いがん患者が「貧乏&ぼっち攻撃」に耐えられるだろうか? 

ムリ。

ガンだけではなく、誰もがいずれは死に至る。糖尿病や高血圧、生まれつきの疾患を抱えながら、事故の後遺症に苦しみながらも普通の社会生活を営む人はたくさんいる。乳がんも、ある程度はそれが可能なガンではなかろうか。社会的にも、そして患者本人たちからも、ガンだけが「死にいたる病」としてやけに暗く深刻に受け止められているように見えるが、別にそんなに特別ではないと思う。「死に至らない人」などいないし、実は「死に至らない病」の方が少数派なのではないか、とさえ思う。

「ガン」ごときに、自分の生活をかき乱されたくないし、今後も、自分の欲しい物を何一つ諦める気はない…。だから、職場にも言わないで、仕事続ける訳なのさ。第一、病気バレすると気を遣われて、腫れ物を触るようにされて、海外出張や大事なプロジェクトからは間違いなく外されてしまうし、そうして閑職まっしぐらだし、リストラなんてあったら真っ先に槍玉だし。やなこった。

…と、初発の時は思っていたし、その通りに頑張ってやってきたけど、今回は遠慮なく休みを使わせてもらおうと思った。あの時より歳とって体力なくなっているし、あれだけ馬車馬のようにストレス満載状態で何年も再発しなかったガンが出てきてしまったという事は、最近、結構、色々な所が疲れているのだ。体がガンに負けてる。

すっきり休んで、仕事を忘れて、早寝早起きしたり、ガーデニングしたり、アロマしたり、散歩したり、料理作ったり、ヨガしたり、もうやりたかったのに忙しくてできなかった事を全部やろう。そして、体力を万全にして治療に臨もう。貯めていたDVDも見よう。元気なうちに旅行もしよう。…と夢は膨らむ。

会社が休ませてくれたらなんだけど。
「ガン」なので、たぶん大丈夫。ある意味、無敵。
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by ombres | 2010-08-12 20:00 | 仕事のこと

アメリカ出張

3ケ月くらい。特に問題なし。
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by ombres | 2005-05-01 00:00 | 仕事のこと